資本的支出を行った場合の減価償却の計算方法には特例があります。
今回は資本的支出を行った場合の、特例計算についてご説明させていただきます。
資本的支出を行った場合の減価償却の特例計算
特例
平成19年3月31日以前に取得された減価償却資産に対して、資本的支出を行った場合には、本体の減価償却資産の取得価額に、資本的支出を加えて減価償却する方法を選択することができる。
資本的支出の取得価額の特例(法令②)
翌事業年度での合算特例(法令55④)
この規定を適用することで、有利になるケースがあります。
具体的にどういったケースが有利になるか見ていきましょう!
<特例を選択したほうが有利になるケース>
(1)建物を定率法で償却しているケース
平成10年3月31日以前に取得した建物について、資本的支出に該当する修繕をした場合には、その建物が定率法で償却していれば、上記の特例を選択することで資本的支出についても、定率法で償却することができるようになります。
この場合原則の償却方法を選択すると、新たに取得したものとして償却することとなり、平成10年4月1日以後に取得した建物として取り扱われることになるため、定額法のみしか使うことができません。
(2)償却が進んでおり、5年間の均等償却が使える場合
平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産の帳簿価額が取得価額の5%に達した場合には、その帳簿価額を基礎に、以後5年間の均等償却をすることができます。なお特例において、本体の減価償却資産の取得価額に、資本的支出を加えた場合には、合計金額の5%に達するまで通常の償却が行われます。
前提:建物5,000万円 住居 鉄筋コンクリート造(耐用年数47年)
資本的支出1,000万円の場合 残存簿価347万円
原則計算
資本的支出年度
本体:5,000万円×0.9×0.022=99万円
347万円(残存簿価)−99万円=248万円<5,000万円×5%=250万円
347万円−250万円=97万円
資本的支出:1,000万円×0.022×6/12=11万円
合計97万円+11万円=108万円
翌年度
本体:(250万円−1円)÷5=499,999円
資本的支出:1,000万円×0.022=22万円
合計
49.8万円+22万円=719,999円
2年合計金額 108万円+719,999円=1,799,999円
特例計算
資本的支出年度
本体:5,000万円×0.9×0.022=99万円
資本的支出:1,000万円×0.9×0.022×6/12=9.9万円
合計99万円+9.9万円=108.9万円
※347万円+1,000万円−108.9万円=1,238.1万円>(5,000万円+1,000万円)×5%=300万円 ∴108.9万円
翌年度
合計:5,000万円+1,000万円=6,000万円
6,000万円×0.9×0.022=118.8万円
2年合計 108.9万円+118.8万円=227.7万円
1,238.1万円−118.8万円=1,119.3万円>(5,000万円+1,000万円)×5%=300万円 ∴118.8万円
償却差額
227.7万円−1,799,999円=477,001円
<原則を選択したほうが有利になるケース>
平成19年3月31日以前に取得された減価償却資産は、旧定額法や旧定率法で償却することになっています。つまり、95%まで償却し、その翌年度から5年に渡って均等償却し1円まで償却します。
平成19年4月1日以後に取得された減価償却資産については、定額法や定率法で償却するため、1円を残して償却を行うことから、旧定額法や旧定率法よりも多額の償却費を計上することができます。
ですので特例が使えたとしても通常通りの方法にしたほうが有利になります。
まとめ
資本的支出の特例計算についてご説明いたしました。
定率法を使う、または償却が進んでおり、5年均等償却が使用できる場合は、特例を使うことによって償却額が大きくなります。
減価償却一つとっても奥が深いですね。
確定申告時期が近づいていますので、古い固定資産に資本的支出を行っている場合は償却方法ご注意ください。